第5回日本脳脊髄液漏出症学術集会
会長 橋本 洋一郎
済生会熊本病院 脳卒中センター
この度、第5回日本脳脊髄液漏出症学会を2026年12月4日(金)・5日(土)に熊本城ホール(熊本市)にて開催する運びとなりました。
本総会では、 「頭痛診療の社会実装 ―明日へのシナリオ―」 をテーマに、第54回日本頭痛学会総会との併催で、脳脊髄液漏出症の最新の知見と実践的な技術を共有する場とすべく、各種講演やシンポジウム、一般演題などを通じて、実りある学会となるよう準備を進めております。
脳脊髄漏出症/脳脊髄液減少症に関しては、懐疑的・批判的な意見もあります。国際頭痛分類では第1版(1988年)から低髄液圧、あるいは低髄圧性頭痛が示されています。第3版(2013年β版、2018年)では典型的起立性頭痛で明らかな原因のない患者において、 体位性頻脈症候群 を除外した後に、 自家血腰椎硬膜外注入療法 を施行することは臨床診療において理にかなっていると記載されました。
わが国では、2007年に「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」、2011年に「脳脊髄液漏出症の画像診断判定基準・画像診断基準」、2019年に「脳脊髄液漏出症診療指針」が出されました。頭痛の診療ガイドライン2021に「低髄液圧による頭痛はどのように診断し治療するか」という項目が取り上げられました。英国のガイドライン(2023)、スペインのガイドライン(2025)も登場しています。
脳脊髄液漏出症/脳脊髄液減少症が、低髄液圧による頭痛としてガイドラインに記載され、「 低髄液圧 および/または 脳脊髄液漏出 に続発する 起立性頭痛 を特徴とする臨床状態」と定義して、診断・治療を進めていく道筋が示されています。
脳脊髄液の漏出は、髄膜憩室(42%)、硬膜破砕(27%)、脳脊髄液静脈瘻孔(3%)などによって起こり、28%は原因不明といわれています。
脳脊髄液漏出症に関する基礎研究・臨床研究で多くのエビデンスがでてきて、治療可能となり、ガイドラインの作成・公開が行われ、 エビデンスに基づく介入(evidence-based intervention:EBI )が、さらに積極的に行われるようになってきました。診療ガイドラインの策定により治療の“ 標準化 ”が可能となりますが、脳脊髄液漏出症ではどのガイドラインを用いるかによって、基準を満たしたり、満たさなかったりするという課題があります。 多科・多職種の頭痛診療に携わる方々によって、院内や地域でのチーム医療・連携医療が進化しています。そのような中で、 feasibility (実現可能性) と sustainability(継続性) を念頭においた脳脊髄液漏出症に対するEBIの 社会実装のためのシナリオ(計画を実現するための道筋) を脳脊髄液漏出症/脳脊髄液減少症の診療に携わっている皆さんと一緒に創っていければと思っています。
脳脊髄液漏出症に関しては、“社会実装”の前のエビデンスをしっかり出す段階かもしれませんが、日頃の臨床・研究の中でのデータを持ち寄って、しっかりした議論ができればと思っています。
今までは1日半の開催でしたが、今回は日本頭痛学会との併催となり、2日間の開催を予定しています。多くの日本頭痛学会の会員の皆様にも積極的に参加していただき、脳脊髄液漏出症の診療・研究の発展を知っていただければと願っています。